チリ・番外編 コンドル(1)

1988年10月にチリ共和国のパイネ国立公園を観光する機会があったので、紹介しましょう。季節は初春。まだ首都サンチャゴにいても寒い日が続く頃です。ここは、サンチャゴから南に約3,000Km。南米の最南端に近い氷河地帯です。最南端のプンタ・アレナス市から、アルゼンチンのパタゴニアと良く似た大平原を車で北方向に約5時間。プエルト・ナタレスという国立公園の入口の街に到着です。

パイネ国立公園は、世界的にも知られた。南米大陸最南端の氷河でもあるので、情報は星の数ほど入手可能ですが、そこで見つけた楽しい光景を紹介しましょう。

うんざりする程の大草原を車で移動してきたけど、最初の2時間程は、陸(水)平線から陸(水)平線だけ。途中には、僅かに丘が感じられる起伏があるだけです。

でも、いきなり運転手が「空を見て」と叫びました。翼の幅が2㍍はありそうなコンドルが浮かんでいました。もっと大きいかも。運転手もチップを期待してか、直ぐに「エル・コンドル」の曲を流し始めました。中々感動的でした。周囲に山岳地帯はなかったけど、近くの平原に羊の遺体でもあるのでしょう。他に2羽のコンドルが食事の最中でした。

次の2時間でやっと山が見え始め、徐々に3,000㍍級の北アルプス並みの山岳地帯が現れました。あまりの急激な変化に「地球は丸い」のではなく、きっと四角いんだと思うほど、山がいきなり目に飛び込んできました。山間部に入ると、風景はまったく異なります。北部のアタカマ砂漠を囲む山岳地帯ととても良く似た感じの山で、運転手いわく、この辺にはたくさんのグァナコがいるはずだと教えてくれました。

それを聞いている傍から、岩陰からグァナコの5、6頭の一群が目の前を横切って、走り去りました。グァナコは、南米の山岳地帯に生息するリャマやアルパカ などと類似のラクダ科の哺乳類で、一見とても大人しそうです。国立公園で保護が行き届いているせいか、最近生息数が増加しているようでした。そのせいか、パイネ滞在中に、このグァナコの群れはよく見かけました。

別の機会に、改めて紹介しますが、この地域から更に南下すると、南半球最南端の大氷河やフエゴ島、マゼラン海峡など、日本人になじみの地域が盛りだくさんあります。残念ながら、駐在中に南極への旅のチャンスがなく、少々心残りでした。(浜崎慶隆)