一時期と違って、2020年には「バイオエタノール?」を話題にすることはめっきり減ってしまっています。自動車は急激に電気自動車の時代に移ってきてしまいました。加えて原油の国際取引価格が1ガロン(159L)65ドル(45円/L)だったのが、2020年3月には約 1/3 の1ガロン 22ドル(15円/L)に急激に下落しました。この原油価格の下落は、米国がオイルシェールからの原油製造が急増し、世界一の産油国になったことへの対抗からOPEC産油国とロシアが原油供給を大幅に増やしたこと、さらに新型コロナウイルスによる世界経済の後退が顕著になってきたためと言われています。
2009年6月、成田からニューヨークを経由してサンパウロまで唯一の直通便JL048便で約2万km を 23時間飛び、ついでブラジル国内便で2時間かけて首都ブラジリアに降り立ちました。ブラジリアでまず気が付いたのは、どのガソリンスタンドでもガソリン価格と同時にアルコール価格も標示してあること、しかも後者はエタノール(26.8MJ/L)とガソリンの発熱量(43.9MJ/L)を考慮して、 ガソリンの価格の 2/3 と安かったことです。これはこの後、ブラジル国内を旅した南部のロンドリーナや、パラグア イとの国境で有名なイグアスの滝の街、フォス・ド・イ グアスでも同じでした。
実はブラジルでは、「ガソリン」と言っても、そのガソリンには予めエタノールが10%含まれていました。この時期、ブラジルでのサトウキビ搾汁液からのエタノールの工場出荷価格は35~42円/L でした。なお、日本では2008年3月に「バイオ燃料技術革新協議会」で確認された第二世代のバイオエタノールの目標価格は、当面100 円/L、技術革新で最終的に40 円/Lとされましたが、デンプン質を原料とする第一世代のバイオエタノールでさえ、100 円/Lを上回り実現の目途は全く立っていない状況でした。
米国はトウモロコシからバイオエタノールを製造していますが、価格はトウモロコシの価格と正確に連動しており、日本円換算では32~55円/Lとなっています。これはWTOとの関係で農産物への直接補助金支出ができなくなったためです。
(飯山賢治)