【今回、出会った本】
『バイオハザード原論』本庄重男(緑風出版)
「バイオハザード」という言葉は、テレビゲームやSFホラー映画ですでにお馴染みですね。でも、現実にそれがどういう事態をさしているのか、なかなかイメージすることがむずかしいです。というのも、ゲームや映画の世界では、おどろおどろしい怪物やゾンビの群れが襲ってくるというありそうもない舞台設定になっているのですから、そのイメージが強烈すぎて、現実感がわかないのも無理もありません。
でも、新型コロナウイルス感染症のいまのパンデミック状況が、じつは「バイオハザード」そのものかもしれないとしたら……、なんだかとてもリアルな現実としてイメージできるのではないでしょうか。
本庄重男『バイオハザード言論』には、その言葉の説明として、「病原体ならびにそれらが作り出す物質が原因で人や家畜およびそれらの環境に発生する災害」を指すとされています。そして本庄氏は、二〇〇三年に起こったSARS(新型肺炎)問題は「バイオハザードの典型例」だと言っています。
そして、次のような警告を発していました。
(ここから引用)
WHOは新型コロナウイルスがSARSの病原体であることを確認したと発表し、それをSARSウイルスと命名する旨の意見を表明した。しかし、何故そのような新種のウイルスが出現したのかは未だ確定していない。
(中略)
SARSに感染した患者の収容施設やSARSウイルスの分離や検査・研究をする施設が必要なことは当然である。
一方、そうした施設で院内感染や病原体の漏出が起これば、近隣に対する新たな感染源になる可能性は否定できない。そこで、病原体の取り扱いや施設の立地などに関する法規制が必要になるが、わが国にはそうした法規制もなく、研究施設については、国立感染症研究所の内部規定である「国立感染症研究所病原体等安全管理規程」が、感染症医療施設については、旧厚生省課長通知で施設基準や消毒・滅菌を定めた「手引き」があるに過ぎない。
(第五章 今後のバイオハザード予防のあり方 より)
(引用ここまで)
この文章は、最近になってから書かれたものではありません。すでに二〇〇四年にはこのような主張がなされていたのです。なんだか、昨年から今年にかけて世界中を席巻しているコロナ禍を、まさに予言したような内容だとは思いませんか?
つまり、本庄氏のお考えに沿うなら、現在のコロナ禍というのは、じつは立派な「バイオハザード」なのだということになるのですね。
さらに、驚くべきことにこの本のなかで著者は、バイオテクノロジーによってつくられるワクチンの予測不可能な結果や副作用についても、具体的な事例をあげて鋭い警鐘をならしているのです。
例えば、野ネズミに対する不妊化ワクチンを開発する過程で、マウスの卵細胞透明帯を構成する糖タンパク質の遺伝子DNAを使用する実験―それはエクトロメリアウイルスをベクターとして使用するものですが―をしたところ、当初の実験では高い効果が認められたのです。その実績をもとに、さらにワクチンの免疫効果をたかめようと、このウイルスに今度はマウスのTリンパ球から分泌されるインターロイキン4の遺伝子を組み込んで―つまり遺伝子組み換えのDNAワクチンにして―マウスに投与したところ、今度は、予期に反してすべてのマウスが死んでしまったのです。
このような事実をふまえ、本庄氏は「安易に人体に対してバイオテクノロジーやその産物を適用することは厳に慎まねばならないと思う」と結んでいます。(了)
(添田馨)