研究と実践の狭間で

 長年研究畑を歩いてきた私にとって、非木材グリーン協会の活動はある意味とても新鮮である。非木材の植物資源を有効に活用するというコンセプトの元、様々な民間企業の方々が自社をより良くするための情報を求めていろいろなルートを通じて集まってくる。そこに研究者としての視点を持って、より有効活用が進むようにお手伝いをさせていただく、という形で関与している。
 普段は研究者として「なぜこうなっているのか?」「どうすればうまくいくのか?」など、ある程度は採算を度外視して真実を追究することを生業としている。しかしながら、研究といえども何らかの「成果」を求められる昨今、省庁、団体、企業等から供される研究資金、いわゆる外部資金獲得のためには、その研究の「社会実装」つまりどう社会に役立つかを明確に表す必要がある。つまり、「真実を追究したい」(研究)と思いつつも、「いかに採算を取りながら社会に役立たせるか」(実践)を念頭に置いて、技術の開発や理論の展開を進めなければならない。

 非木材グリーン協会はそもそも「実践」(=民間企業)寄りの団体である。そこに「研究」側の人間が加わると、それぞれにとって新鮮な部分に触れ合うチャンスが大幅に増えることになる。それは新たな方向性を生み出す切っ掛けとなりうる。その一方で、お互いに「もっとこうすればいいのに・・」「なぜどんどん進めないのだろう・・」など、なかなか理解が及ばないことも多々出てくるように思う。例えば、「小規模実験をたくさん行い、最適な製造条件を見つけ出すことが最も重要」と思う研究サイドに対し、「一刻も早く試作品を出して世間の評価を得る」と実践側は考える。前者は「最適条件→実機生産」、後者は「高評価→実用化」と、それぞれ目的は同じであってもアプローチが真逆、すなわち「鶏が先か、卵が先か」である。この考え方のギャップを如何に埋めるか・・なかなか難しいテーマではあるが、相手の思いを汲みながら相互理解を深めることが、大きな課題に取り組むためのまず第一歩になるのであろう。
                                        (田中良平)