2004年10月、バンコックのカセサート大学農業・農業工学生産改良研究所(KAPI)に共同研究プロジェクト実施のため滞在していました。その時、同大学のカンチャナブリキャンパスで、食料と競合しない燃料になるジャトロファの栽培を行っているとの情報がありました。「ジャトロファ」という植物名は私にとって初めて耳にするものでしたので、さっそく車を走らせました。カンチャナブリは、バンコクの西120kmのミャンマーとの国境近くの、映画「戦場にかける橋」で有名なクワイ河鉄橋のある街です。
ジャトロファ(Jatropha curcas)は、中南米原産のトウダイグサ科の樹高3-8 m程度の落葉低木樹で、少ない降水量のやせた土地でも生長が早く、旱魃や病気に強く、樹齢は最大50年程度と報告されています。
植栽後3-4年目から収穫でき、条件が良ければ小さめの梅の実のような多数の果実を年に3~4回つけます。カセサート大学の農場では2m x 2.5m間隔で栽培していますから1haあたり2,000株の植栽になります。
果実の中にある種子は黒褐色で重さが0.6g程度で、重量の60%程度が脂質です。種子の収量は、1haあたり年1,000~1,500kgですから、油は年0.6~0.9㌧/haになります。この数字はパーム油の2.8㌧/haには及びませんが、ナタネ油の0.7㌧/haに引けをとりません。Jatropha油には発がんを促進する有害なホルボールエステルが含まれているので食用にはできず食料と競合しないバイオ燃料として期待されました。しかし商業ベースに乗せるために生産地が拡大すれば、最終的には既存の食糧作物からの転作が進むことになるでしょう。Jatropha油はそのままでもA重油と同様に使えることから、途上国での小型の農機具運転用燃料に限った地産地消のエネルギーと捉えるべきでしょう。
2010年12月、かずさDNA研究所はゲノム解読に成功したと発表しました。