【記事紹介】新型コロナウイルスの起源は?

 朝日新聞 2020年12月7日朝刊の第1面に、新型コロナウイルスの起源についての記事を掲載しています。記事では記者が中国南部の雲南省都昆明市の南300km、ラオス及びベトナムとの国境近くの山村通関の状況をレポートしています。このあたりには銅の採掘場がありましたが、坑道に入った人に重症の急性呼吸器疾患が多発しました。その原因は坑道に住み着くコウモリの糞に含まれていたRaTG13と名付けられているコロナウイルスと考えられています。このRaTG13は新型コロナウイルスSARS-Cov-2に極めて近い仲間であることがわかっています。
 米国トランプ大統領が新型コロナウイルスは中国・武漢の「武漢ウイルス研究所を起源」とすると断定し、「中国ウイルス」と言い続けていることもあって、米中関係だけでなく、国際政治、とりわけ経済的な緊張関係をもたらしてきました。このような状況の下で、起源を明らかにする研究が個々に進められるとともに、WHOも将来も発生するであろう新しい感染症への対応のためにも新型コロナウイルスの起源を明らかにする国際調査団を編成し、調査を開始しています。
 その過程で国際調査団の調査課題、方法及び予備的な成果について、及びSARS-Cov-2の起源に関わる学術的位置づけ等についてとりまとめたレポートが最近のNature誌に掲載されています。その中の2つのレポートを紹介します。
 中国の武漢で最初に患者が確認されたのが、2019年12月でしたが、2019年3月にスペインのバルセロナで採水された下水試料中にSARS-Cov-2のゲノムの断片が見つかっていたこと、2010年にカンボジアの北部で捕獲されたコウモリの冷凍試料から、さらに同じ頃捕獲され東京大学農学生命科学研究科獣医学専攻の研究室で凍結保存していたコウモリから、SARS-Cov-2に深く関連するコロナウイルスが存在していました。

Nature, Volume 587, Issue 7834 (19 November 2020)
News: ‘Where did COVID come from? WHO investigation begins but faces challenges’
https://www.nature.com/nature/volumes/587/issues/7834

Nature, Volume 588, Issue 7836 (3 December 2020)
News in Focus: ‘Coronaviruses closely related to the pandemic virus discovered in Japan and Cambodia’
https://www.nature.com/nature/volumes/588/issues/7836

(飯山賢治)