魅惑の熱帯果実1:ドリアンとマンゴスチン

 東南アジアのどの国に旅しても、また場合によっては国内でも目にし、味わうことができる熱帯果実ですが、そのいくつかを改めて紹介しましょう。

タイ南部の街ハジャイの市場の果実店

 まずは「果実の王様」ドリアンでしょう。ドリアンの樹(Durio zibethinus)は、高さが10~20mにもなる常緑樹で、1 本の樹で1 年に100個ほど果実をつけます。果実は受粉後3ヶ月ほどで成熟し、大きさ20~30cm、重さは1~5kgにもなる果実を実らせるという驚異的な植物です。果実の外皮には太く短く鋭い棘が無数にあり、果実自体が重いので大きなサイズの果実を素手で持つことが大変です。

タイの国道沿いの店でドリアンをいただく

 強烈な臭いのために、多くのホテルやタクシーなどは「持ち込み禁止」の掲示があります。この匂いは多くの成分が混ざったものですが、硫黄化合物の 1-プロパンチオール C3H7SH や 1-(エチルスルファニル) エタン -1- チオール H3C-CH2-S-CH(CH3)-SH などが核となっています。腐った玉ねぎの匂いとか、おならの匂いとかいわれています。そこで店先で切ってもらって屋外で食べます。完熟した果実はクリーミーで多くの人が一度食べたらやめられないと言います。なお、いつもというわけではありませんが、国内でも東京上野駅近くの「あめや横丁」で手に入れることも可能です。

美しくおいしいマンゴスチン

 次は「果実の女王」、マンゴスチンを紹介します。7~20mにもなる高木(Garcinia mangostana)で、果実は直径4~8cmの球形で、表面は滑らか、果皮は厚く、やや硬く、暗赤紫色です。後述することになりますが、ウルシ科のマンゴー(Mangifera indica)とは全く別の植物です。マンゴスチンの食用の果肉部分はミカンの房のように分離した形をしており白色です。それぞれの房には1個の種子が入っています。時には種子がほとんど溶けてしまったような房もあります。果実は適度な酸味もあり、濃厚な甘酸っぱさがなんとも美味です。まさに、「果実の女王」と呼ばれるにふさわしい見た目の美しさとおいしさを兼ね備えた果実です。しかし、果実は湿度に弱く、多雨の年には白色の房が水っぽく透明になってしまったものも多々あるので、見分けが重要です。樹の周辺の排水を考慮した栽培法も開発されています。しかし素人には判別できないので、店の人に選んでもらっています。

(飯山賢治)